①世の中がどのように変わろうとしているのかを理解できる
②日本がなぜ先行き不透明なのかその原因を知ることができる
③今後どのような人材が求められ日本は何に取り組んでいくべきかを理解できる
モモキンです。
今回は「シン・二ホン」という本を紹介します。
安宅和人さんの本になります。
本ブログでは「イシューから始めよ」に続いて2冊目の紹介になります。
累計販売15万部、ビジネス書大賞2020特別賞(ソーシャルデザイン部門)を受賞しています。
刊行は2020年2月20日でページ数は444ページと非常に読み応えのある本です。
この本を読んでモモキンが考える結論は以下3点になります。
①IT技術の発展で大量生産の時代は終わりIT技術を用いたサービスなどが世界をリード
②日本はこれからの未来を担う人材にもっと積極的に投資をする必要がある
③データXAIの力を解き放つための3つのスキルセット習得し異人を目指す
また世界経済や大学の教育制度等に関する知識がないと理解するのは難しいかもしれません。
この記事では内容の紹介とモモキンが感じたことを述べて行きたいと思います。
内容が多岐にわたるので省略しているところも多々あります。
ブログの内容を参考にして実際に本を読んでもらえるとありがたいです。
「シン・ニホン」とは
著者は慶應義塾大学 環境情報学部 教授 兼 ヤフー株式会社 CSO (Chief Strategy Officer)の安宅和人さんです。このブログでも「イシューから始めよ」という本を以前紹介しています。
こちらの記事では本の内容と自分の仕事と照らし合わせて少しいやになってしまいましたがいい振り返りができたと思います。
ですがおそらく本書の方がYoutube大学でも紹介されていますし有名だとおもいます。
本書の解説を始める前に以下のようなことを感じたこありませんか?
・税金や保険料が高く今後も上がることはあっても下がることはないだろう
・技術立国日本と昔はよばれていたがいつの間にか過去の話になってしまった
・サラリーマンは給料が上がらずジリ貧だと思う
この本を読むとそのあたりの答えが分かるかもしれません。
最後のまとめにて解説したいと思います。
1章 データXAIが人類を再び解き放つ
この章では最近の情報技術の進化により世の中がどう変わっていくのかを説明しています。
2016年3月にAI計算機が世界トップレベルの囲碁棋士を破った事例をあげ、計算機とAI技術が近年著しく発展していることを説明しています。
計算機、情報科学、ビッグデータの進化により「情報の識別」、「予測」、「実行」といったサービスが今後自動化されていくと述べています。
近年様々なサービスが開発&導入されていますね
またデータXAIの世界は変化が指数関数的に起きると述べています。
5年や10年で数倍ではなく10倍や100倍といったペースで拡大すると予測しています。
その結果データXAI化は全ての産業に適応され、ヒトが行うこととデータXAIが行うことの住み分けが進みます。
今後はヒトにしか生み出せない価値の重要性が高まると述べられています。
また世界の時価総額トップ10の半分以上がIT関連事業を本業とする会社であることを事例に産業構造が10年で大きく変わったことを指摘しています。
7社がIT関連でアメリカが7社を占めていますね
従来はリアル空間でのスケール(事業規模)が物をいう時代でしたが技術をテコに世の中をアップデートできる企業の重要性を述べています。
そして未来の方程式として以下の答えを提案しています。
未来 = 課題 X 技術 X デザイン
(商品・サービス) (夢) (Tech) (Art)
未来は課題や実現したい夢を技や技術を用いてデザインしてパッケージ化することだと述べています。
「デザイン」という言葉を意匠という意味だけではなく幅広くとらえる重要性についても述べています。
2章 「第二の黒船」にどう挑むか
この章では産業構造の変換により窮地に陥っている日本の状況とその原因について説明しています。
そして、その問題への対策が提案されています。
日本のGDP(国民総生産)は米国や中国やドイツが大きく伸ばしている中、ここ25年間伸ばすことができていません。
人口が減っているのが問題と思われているかもしれませんがそうではなくて一人当たりの生産性が伸ばせてないことが原因と分析されています。
またICT(情報通信技術)分野で世界をリードできなかったからという意見もありますが日本でもICT分野は成長しており他業種の生産性が伸びていないのが原因と説明されています。
たしかに1990年代のバブル崩壊後30年間デフレが続いているとそうなりますよね、、、
さらに生産性が伸びなかった原因として以下の項目をしています。
- うまく人材活用できてない層が多くある(若者、女性、高齢者)
- 日本の大学のランキングが低下し、論文投稿数も減ってしまった
- 計算機科学分野の世界的な出遅れ
この状況を打破するために日本にはデータXAI分野での巻き返しが必要となってきます。
そのために著者は社会を「AI-ready化」する必要があると提案しています。
「AI-ready化」とはAIについて議論したり活用する用意ができている状態を意味します。
具体的には「開発する人材、ユーザのリテラシー、教育システム、社会システムといったものがAIを活用する準備ができているか?」ということを意味しています。
3章 求められる人材とスキル
この章では著しく変化が進む社会においてどのような人材やスキルが必要とされるかについて説明しています。
従来の産業は大量生産することで価値を高めることが重要とされていました。
しかし今後は「創造」と「刷新」こそが大切な時代と述べています。
そして創造と刷新により未来を作れる人とは「異人」であると説明しています。
ここでいう「異人」とは以下のような内容になります。
<従来>
・みんなが走る競争で強い人(資格試験、有名な会社に入社する)
・科学、工学、法律、医学など個別領域の専門家
・自分でなんでもできるすごい人
<今後(異人)>
・あまり多くの人が目指さない領域のいくつかでヤバイ人
・夢を描き、複数の領域をつないで形にする人(課題X技術Xデザイン)
・どんな話題でもそれぞれ自分が頼れるすごい人を知っている人
また「人としての魅力」も重要で育成する必要があると述べています。
「人としての魅力(チャーム)」は以下のようなものであると説明されています。
<人としての魅力(チャーム)>
・明るさ、前向きさ
・心の強さ
・信じられる人であること、人を傷つけたり騙したりしないこと
・包容力、愛の深さ、心の優しさ
・その人らしさ、真正さ、独自性
・エネルギー、生命力(運気の強さ)
・リスクをとって前に進める提案力、実行・推進力
・建設的な発言
・協力し合う、助け合う人柄、耳を傾ける力
・ユーモア、茶目っ気
・素敵な裏表のない笑顔
そしてデータXAIの力を有効活用するためには以下3つのスキルが必要と述べています。
<データXAIの力を解き放つための3つのスキルセット>
・データサイエンス力(統計数理・情報科学を理解し使う力)
・データエンジニアリング力(データサイエンスを実装・運用する力)
・ビジネス力(課題を整理し解決する力)
3つの力はどれも重要ですが全てを高いレベルで保有するのは困難なので1つを磨き込んで残りはチームを組んで補完しあえばいいと解説しています。
4章 「未来を作る人」をどう育てるか
この章では今まで説明してきたデータXAIの持つ力を解き放てる人、キーワードとなっている「異人」というべき人をどのように育てるかについて説明しています。
先ずリテラシー層(小中高、大学教養課程まで)に現代の基礎教養を持たせたいと述べています。
現代の基礎教養とは以下の3点になります。
①母国語、世界語(英語&中国語)でモノを考え、人とやり取りする力
②課題を設定し解決する力
③データXAIの力を解き放つ基礎能力
そして国語と数学の力を再構築する必要性についても述べています。
国語については以下の内容を教育する必要があります。
- 分析的、構造的に文章や話を理解して課題を洗い出す(理解・解題)
- 論理的かつ建設的にモノを考え、組み上げる(構成)
- 明確かつ力強く考えを口頭及び文章で伝える(表現・伝達)
数学については以下の領域を学んでおきたいと述べています。
- 統計数理の基礎となる分布、ばらつき、確率的な概念
- 三角関数、指数関数ほか代表的な関数
- 二次曲線
- 数列
- 空間座標、複素数平面、極座標的な概念
- 線形代数の基礎となるベクトル、行列、内積・外積
- 極限、微分・積分の基礎概念とその図形的な意味
まとめる高校までに数Ⅱ+Bまでを履修して欲しいと述べています。
ここまでの内容は難しすぎてよく分からないかもしれません、、、
一方で「異人」とよばれるヤバい未来を仕掛ける人を育てるポイントとして6つをあげています。
①意思、自分らしさ、憧れ
②皮膚感を持って価値を生み出すことを理解する(仕事の価値を常に理解している)
③サイエンスの面白さと意味への理解を深める
④夢X技術Xデザイン視点で未来を創る教育を刷新
⑤道具としての世界語を身につける
⑥アントレプレナーシップ(起業家精神)の素養
それぞれの詳細については本書を確認して頂けたらと思います。
学校で習うことができるものは一部に限られていますが本やインターネットの世界には詳しく解説されているものが沢山あります。
5章 未来に賭けられる国に
この章では現在の国家予算の配分の問題点とその対策について説明しています。
まず最初に日本の研究開発予算の低さを指摘しています。
2016年時点での日本の科学技術予算を1とするとアメリカと中国はそれぞれ4.7倍、3.7倍となっています。
またGDPに対する割合で比較しても低く日本は科学技術に予算を投下できていないことを説明しています。
論文数も予算に比例するため日本は少なく、データXAI化の重要局面でこそ論文数を稼ぐ必要があると訴えています。
また米国と日本のトップレベル大学間の学生一人あたりの予算についても2015年時点で3~5倍の差がついている状況と説明されています。
日本の大学の予算は国からの運営交付金がメインであるのに対し米国の大学の予算は投資や運用益によるものがメインとなっています。
また卒業生からの寄付も米国の方が圧倒的に多い状況になっています。
日本も同様に基金を設立し資産運用にて予算を捻出することを提案しています。
一方で国家予算については2016年の歳入と歳出の分析を行うと社会保障給付費と地方交付金と国債の支払いで73%を占め残り27%の26兆円が国家予算となっています。
高齢者の保障ばかりで未来を担う人材への投資が全くできていないと説明しています。
この予算の振り分けを見直す転換点にきていると述べています。
6章 残すに値する未来
この章では著者が考える日本が創るべき未来について述べられています。
まず未来の予測はできないが自ら仕掛けて創るものだと述べています。
そして地球の置かれている状況として以下の課題があります。
・枯渇する水産資源
・森の多様性の喪失
・人間の圧倒的なエネルギー消費による温暖化
このままでは地球が持たないと結論づけています。
そこで著者は国連が提唱しているSDGsと経団連・経産省が提唱しているSociety5.0の中から共通のカテゴリーに分けて整理をしています。
そしてこの2つの活動の重なったところこそが目指すべきところであると述べています。
最後に「風の谷のナウシカ」をヒントに人と地球が共生できる社会「風の谷」について考えるプロジェクトを立ち上げています。
そこでは共生するためについて様々な議論がなされ生活するためのコストや教育そして医療の問題と課題が多くあることが明確になっています。
それを解決するためにテクノロジーを活用しつつ段階を踏んで実行することが重要と述べられています。
まとめ
ここまで記事を読んでいただきありがとうございます。
安宅先生の本は面白いですが内容が高度で解説するのに苦労しました。
IT技術の発展で世の中の価値観は変わってしまいました。
日本の社会はうまく産業構造を転換することができず高齢者社会に対しても受け身になってしまっています。
サラリーマンは給料も上がらず重い税金と社会保障費に苦しんでいます。
一方で調子がいいのは起業家やYoutuberやカリスマ投資家といった「異人」の人たちかもしれません。
モモキンがこの記事を書いて感じた事は下記2点です。
①世の中の動きを感じつつ個人の能力を高めて行動していくしかない
②そして日本の明るい未来へ協力できることはないかを考えていきたい
以上ありがとうございました。
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